突然ですが、秋は考察に向いている季節です。
外に向きがちだった気持ちも、肌寒さに身が縮むのと呼応するように徐々に内へと向かい、俄然、美術館に足を運ぶ頻度も高くなってきます。
私事ですが、東京都現代美術館内にある「100本のスプーン」というカフェがお気に入りです。(アートちゃうやん)
さて、そんなアンニュイモードな今日は、ある言葉達について考えてみようと思います。
芸術分野になじみの深い
「モチーフ」「 オマージュ」「インスパイア」「トレース」です。
これらは広告制作においても「果敢に行うか」「秘めやかに行うか」は別として、人気のある企画タイプの一つではないでしょうか。
廃れない理由はいろいろとあると思いますが、やはり「元ネタが有名であること」は大きな要素だと思われます。
さて、そこで皆さんが気になるのは「元ネタ」の許可は必要か否か、ですよね。
その検討に入る前に、これらの言葉の意味を改めて確認してみたいと思います。
■モチーフ:
作品の主題/創作の動機となる中心的な題材のこと。
例)「美女と野獣」をモチーフにした「竜とそばかすの姫」
■オマージュ:
芸術家などにささげる敬意や、その敬意を表した作品のこと。
どのように敬意を表現するのか、という点は個々人によるので難しいですが、元ネタが感知される必要はなく「わかる人だけわかればいい」といった表現に収まっているという印象があります。
例)『スターウォーズ』の<C-3PO><R2-D2>は、黒澤明監督の「隠し砦の三悪人」に出てくるお百姓さんコンビがモデルとなっているといわれています。
■インスパイア:
感化、刺激やひらめきを与えること。
既存の作品に影響を受けて同じようなテーマの作品を作ること
例)ブロードウェイミュージカル『ウエスト・サイド・ストーリー』は、シェイクスピアの『ロミオとジュリエット』にインスパイアされた作品
(*そもそもロミジュリは、パブリックドメインです)
■トレース:
そっくり写し取ること。これは説明不要ですね。
書いていて意外ときっちりすみ分けるのは難しいなと思いましたが、大体こんなところかと思います。
料理で例えるなら、
「モチーフ」はメインの具材であり、「オマージュ」は尊敬するシェフへの思い、
「インスパイア」は例えば、スパイスの使い方で旅を表現するシェフがいたとして、同じように旅をテーマに考えられたメニューといたところでしょうか。
いや、むしろわかりにくいか(汗)
気を取り直して、前に進みます。
よく「作者への愛や尊敬を込めた〇〇〇ですし、(ここに、上記の言葉達が入ります)、
映画などでもよくあることだと思うので、広告であっても、そこは真意をくみ取ってくれるセーフゾーンですよね。」のような感じで意見を求められることがあります。
たしかに、例に挙げた作品が著作権侵害の問題へ発展したという話は聞いたことがありません。(「トレース」はアウトです。)
正しい匙加減であれば問題ない、ということになりますが、この匙加減を間違うとただちに危険ゾーンになりやすいので、「振れば著作権侵害にならない魔法の杖」のように使用するのではなく、慎重に表現方法を考える必要がありますが、逆に、この点が企画者の醍醐味かもしれませんね。
ちなみに問い合わせのほとんどは危険ゾーンです。うまく昇華するのはつくづく難しい。
また、あくまでも印象ですが、同じように商業であっても、映画より広告は、作品性より商業性がより強いため、権利者の目は厳しくならざるを得ない点も留意が必要だろうと思います。
ちなみに「パロディ」という手法もあり、特徴は模倣により、ユーモアや皮肉に繋がるということです。
誰も知らないネタのパロディだと、その面白さが伝わらないので、元ネタが著名である点も特徴です。個人的には風刺の利いたパロディは好きですが、許諾の必要性を判断するのは、法のプロでも難しいケースが多く、また論争・炎上などを引き起こしやすい性質のため、高度な技と繊細な感性が求められるように思います。
広告では風刺はなかなか活用されないため、他の界隈の事例ですが、有名なところではパーマ大佐による「森のくまさん」の替え歌や、時計の「フランク三浦」などが思い浮かびます。
堅苦しい法の中でこれらの裁判は、おかしみがあって結構好きです。
ご興味のある方は、ググってみてください。
それでは、本日はここまで!
次回をお楽しみに。
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